定期的に推理ゲームがやりたくなる。そんなめちゃくちゃ得意というわけでもないのだけど。アハが欲しいのだ、アハが(そういえばアハ体験てもう古くて知らない人も多いのかな)
現実的なのもいいけど、奇抜な奴もいい。ルールの中で論理を組み立てるのが楽しければ、密室首切り殺人でも、死なないはずの龍が殺された!でも、ゲームの登場人物という設定でも良い。
と思って、今回見つけたのがこちら、「パラダイスキラー」。
奇抜も奇抜、なんならどういうゲームなのか何もわからない。パラダイスは死んだ!誰が殺したのか!とか言われても、パラダイスって何、人??という感じである。
ちなみに公式のあらすじがこれである。
現実離れした島。死んだ宇宙人を蘇らせようとする悪質な人間たちの文明。密室殺人。
パラダイスは数千年ごとに再生する島だ。そこではエイリアンを崇拝する者たちが堕落した神々に力を与え、いつの日か復活させるべく宇宙に向けてサイキックパワーを放っている。だがその力は各島を崩壊させようとする悪魔たちの興味を引いた。その悪行は議員が新たなリアリティを創生するまで続く——。
システムは完璧ではないが、いつか——次の島、パーフェクト25になれば完璧なものになるだろう。だが再生の前夜に議員が殺害され、パラダイスも殺されてしまう。
そのあおりを受けて、捜査オタクのレディ・ラブ・ダイが犯人捜しのために亡命先から呼び出された。これはあらゆる犯罪を終わらせるための犯罪なのだ。
事実とは何なのか? 真実とは? 二つは同じものなのだろうか?
待って。
わからないことが多すぎる。あらすじがあらすじになっていない。エイリアンとかサイキックパワーとか、悪魔とか議員とか、んん??
このあらすじを読んで頭が痛くなる人にはこのゲームは向いていない。なぜならゲームが始まっても万事この調子だからだ。
しかし、ナニコレ面白そう、と思う人なら絶対に楽しめる。そういう人は先のPVも、なんかよくわかんないけどカッコイイ、と思っているはずである。
そういう人はすぐにsteamかswitchかPS5でこのゲームを買ってプレイすると良いと思う。
かくいう私も、このわからなさがハマった。PVを見て、軽く情報を調べた結果、物語はやっぱり何もわからなかったが、オープンワールドの殺人事件捜査ゲームでアクションありということがわかった。
全キャラが容疑者で、証拠集めと尋問を繰り返して進むらしい。裁判は任意のタイミングで始められ、真相を無視して罪を擦り付けるということもできると。
シルバー事件やキラー7などのいわゆる「須田ゲー」にもインスパイアされているらしい。
おおっ、自由度が高くて面白そうじゃないか。須田ゲーはやりたいと思いつつ結局やらずに生きてきてしまったが……。
あと、足湯に入ると2段ジャンプができるようになるらしい。何それ、イカス!
メッチャ面白そうなので、即ダウンロード、プレイ。
主人公、レディ・ラブ・ダイ(名前もいちいちイカス!)はかつて悪魔に魅入られて犯罪を起こした結果追放された捜査官で、300万日ぶりにパラダイスに戻ってきたとのこと。300万日て。いくつだよ。導入である主人公の設定から訳がわからんが、まあ捜査大好きグラマラス美人を動かせるということでOK。
そして、超高所からのスーパーダイビング!からのタイトルコール!バチバチにキマッたBGM!うお~かっけえ~!!
しかし、すぐに激しい3D酔いで2時間ほど寝込んだ。初めての経験でショックだった。塊魂でも酔ったことないのに。デフォルトの設定だと完全に酔ってしまうため、すぐに設定を変更。
PCでやる場合、モーションブラーを切って、マウス感度を下げて、画面を小さくすると割と解決するので、もし私と同じように酔ってしまった人は参考にされたし。
さて気を取り直して、プレイ続行である。
相変わらず誰も説明してくれない世界観だが、やるべきことは明確に提示される。どの容疑者がどこにいるかもわかる仕様。しかし捜査する順番はプレイヤーにお任せで、謎解きはほぼヒントなし。親切なんだか、不親切なんだか。
ただ、ファストトラベルは金がかかるのは間違いなく不親切。まあ、ファストトラベルしなければならないほど難解な地形かというと、そこまでではないので、とりあえず許せる。次回作でもっと島が広くなったらタダにしてほしい。
そんなこんなで、よくわからないまま崖から落ちて、よくわからない人の死体を見つける。誰この人?とにかく序盤は何をやっても何もわからない。そのため、とにかく探索をしてアイテムを探すことから始まるのだ。
アイテムはとにかくたくさん落ちている。アイテムはほとんどが事件に関連するものではなく、収集要素なのだが、アイテムを収集していると、なんとなく世界観がわかってくるようになっている。
この世界は現実とは離れた世界。シンジケートと呼ばれるほぼ不老不死(殺されると死ぬし、自殺もできる)の人々が神を蘇らせようと島を作り、現実世界から人間を連れてきて崇拝させている。同時に、悪魔も島に入り込んでしまい、悪魔に憑かれた人間が毎回犯罪を起こし、結果島が毎回ダメになってしまう。
ダメになるたびに、庶民はみんな殺してエネルギーとし、新しく島を作るということが24回繰り返された。そしてこの24島目もまた悪魔憑きのために終了することとなったのだが、25号島への移行の際、島の管理を務めるシンジケートの議員たちが全員殺されてしまった……。
どうも、あらすじはすべてほんとうのことのようだ(そりゃあそう)
ちなみにここまでの基本世界設定がわかるまで、大体2時間程度の探索が必要だったと思う。でもこの世界観が徐々に見えていき、キャラクター同士の、もしかして別の言語を喋ってるんか?翻訳が間違ってるんか?というやり取りの内容も意味がわかっていく。えーめちゃめちゃ楽しい~!
そのうえ、探索がとにかく楽しい。微妙に日本ナイズドされたマップは細かいところまで凝っているし、アイテム一つ一つの説明が洒落ている。大切なことなので再び述べるが、足湯に入ると2段ジャンプができる。空中滑走もできる。素晴らしい。
アイテムだけでなくBGMもマップに落ちているので、探索すればするほど、新しいBGMが流れまくって脳汁が溢れる。
私はギリギリ90年代生まれなので良く知らないのだが、80年代ジャパニーズ・シティ・ポップをオマージュしているらしい。作者、どうもかなりの日本通の様子。
そしてそして、魅力的なのは、世界観やアイテムだけではない。
キャラクターもたいへん魅力的なのだ!
前述したように主人公も名前はカッコイイし、見た目も超イケてるし、声も口調もとてもカワイイ。
しかし、他のキャラクターも負けず劣らずイケている。というか、見た目のインパクトで言うと、主人公は全然普通である。シャツを羽織った赤い骸骨とか、ヤギの頭のアイドルとか、黄金髑髏頭の入れ墨男とか、人物像や過去を分かった今でも、ええ……とちょっとビビる。
そのうえ、庶民の幽霊やら、ばかでっかい神様やら、名前だけの登場なのにめちゃめちゃキャラ濃い奴とか、急に出てきてどうしたのみたいなキャラとか、色々いてほんとうに楽しい。
さて、数いるキャラクターの中で、私がいちばん推しているのがこの子、アキコ14大元帥である。
カワイイ。単純に見た目が好き。名前と作者の性癖的にたぶん日本人。
アキコは、大元帥という名の通り、島の軍部を預かる強く高潔な女性。何かと母国語(多分日本語)で暴言を吐き、主人公のことを<アバズレ>とのたまう。色々と強い女なのである。いや~とってもかわいいね(個人の感覚です)
主人公のことを蛇蝎の如く嫌っており、親密度を上げても全然仲良くなれない。ずっと「I kill you!」とか言われ続ける。
そんなアキコは部下をなにより大切にし、ついでに恋人にもしている。おまえがアバズレじゃん……と思ったら、割と実際にそうだった。
かわいそうなことに、自分はシンジケートの一員だから、島が終わっても死なないのだけれども、軍部の部下たちは庶民なので、島が終わればみんな死んでしまう。恋人も死んでしまう。
アキコはそうやって毎回、部下を失い、恋人を失い、失ってはまた作り、そして失って……を繰り返してきた。いやあ、なんて愚かでカワイイ女なんだ!
本編の重大なネタバレなので詳しくは伏せるけれども、アキコは犯行の早い段階で関わっており、真相を少しでも解明しようとすると、どんな道を辿っても有罪になってしまう。
ほとんどのプレイヤーはアキコに会ってすぐに、こいつは嘘を吐いているとわかってしまう。
何を聞いても、明らかにでっちあげの犯人を、こいつが犯人だと言い続けるし、証拠を付きつけられても、<アバズレ>とか暴言吐きまくって大した言い訳もしない。たぶんできない。この嘘の吐けなさと語彙力のなさがまたカワイイんだけど……(個人の感覚です)
この子は、普通の推理ゲームなら、序盤で自爆して自白する噛ませキャラといったところだろう。まあ、このゲームでもそれは変わらないのだが……。
しかし、このゲームでは、なんと、アキコを無罪にすることが可能なのだ。
ていうか、プレイ開始当初に証拠もなしに裁判を始めて、何にもわからないよ~って言って不起訴で終わらせることもできる。すげえゲームだ。
もちろん、証拠が揃っていても、自分の好みに合わせて有罪にするキャラクターは調整できる。有罪になると有無を言わせず殺されてしまうので、つまりは生存ルート、生還エンディングがプレイヤーの好みによって可能ということである。
この自由度の高さ!アッパレ!推しキャラの罪を、特に罪のないキャラにおっ被せよう!もしくはよくわかんなーいって言って適当に不起訴にしよう!やったー!最低だ!
まあ、アキコは部下をシンジケートに入れてやると騙されて行動しているので、他のがっつり罪を犯しているキャラよりは同情の余地はあるんだけどね。
ちなみにこれは他のキャラでも同様で、極悪人だけど推しだし言ってることはわかるから助けよう、ということが可能である。
そんなわけで、無罪にしてみました!くらえ!これが俺の真実だ!
イエーイ!ふつうに推理してやってると、見られない画面です!
そして裁判が終わると後日談的に無罪になったキャラに会いに行くことができ、ちょっとした会話がある。ついでに証拠は不十分だがどうしても殺したいというキャラを私刑にすることも可能。やりたい放題なのである。
まあ、どんな道を辿ろうと、基本的には汎用台詞(証拠不十分でも見逃しでも同じなのでそれは少し残念なのだ)だから、あまり期待していなかったのだけれども……
あれ???このゲーム百合ゲーだっけ???ふたりはプリキュア???(かみむらさんは百合を憎み合いの美学だと思っています)
絶妙に状況と台詞が嚙み合ってて、アレコレ今後の想像ができる素敵な展開でちょっと良かった。アキコにはなぜか見逃されたことに悶々としながら、次の島で主人公の活躍を見守っていってほしいね……!主人公もたまに意味なく会いに行っては不穏なこと言いながら親友でしょ?って嘯いてほしいね……!うわーかわいいね……!(嫌な性癖ダダ洩れでスイマセン)
まあ、続編があるとして、たぶん真相エンディングの先となるので、この子はいないのだろうけれども……
それでも私は推しキャラが生きてるifがあるだけでうれしいよ!
ちなみにアキコを有罪にする真相ルートだと、恋人っぽい部下から恨み言を言われます。割とつらいけど、これはこれでエモい。
そんなわけで、パラダイスキラー、たいへん面白いゲームでございました。続編があると嬉しいなあ……。
今回、物語のネタバレはせずに書いてみました。世界観以上に謎解きと真相解明が面白いゲームなので、よければ皆さんプレイしてみてください。
そして推しキャラを無罪にしたり、無罪のキャラに濡れ衣を着せたり、真相を冷酷に突きつけたり、自分だけの真実を見つけてください。
現在、Steam、switch、PS4,5でプレイできる模様。インディーズゲームで価格も安いし、実績をコンプリートしても20時間いかないくらいで終わる手軽なゲームなので、お忙しい方にもおすすめです。