Thisコミュニケ―ション6巻面白かったですね!
何ケ月前の話をしてるんだ(2022年4月4日発売)というか、1ケ月後に新刊出るやないかい……
ということで、7巻が出る前に、今日はむつについて話をするよ。
ほんとうは6巻を読んですぐにこの話をしたかったのだけれども、なんか色々あってできないまま来てしまった(4月に心を打ち砕く事件も起こったし)
流石に時期外れな感じもあり、もういいかな……とも思ったんだけど、先日全巻読み直したらやっぱり面白かったので、作品応援のためにも書いておこうかなと……。
まだ読んでいないという不届きな人間もいるらしいので、私なんぞでもワーワー言うことで作品の知名度を上げることに繋がっていったら嬉しいしね。
それにしても、いや、カワイイよね、むつ。
ハントレスたちの中で一番末っ子なのに、おそらくは最弱(人間よりは強いんだろうけれども)で、コミュ障で、コミュニティに入れず、いつも隅っこで膝を抱えている。
何の因果か、むつだけは死んでも記憶が保持されているという地獄仕様で、誇張でなく死ぬほどの痛みを忘れることができない。かわいそう。
そんなこともあってか、基本的に子どもの考え方や行動が目立つハントレスたちの中で、子どもっぽい感情の発露や競争心が乏しい。むつが露わにするのは、痛みに対する怯えくらいである。
みんなが死んで巻き戻った分、1時間ずつ大人になっていくと考えると、そうならざるを得なかったのかなあという気もするし、むつ自身がそもそも知能が高いというのもありそう。
むつは、戦場における現状での最適解を考えられるし、デルウハが記憶操作のためにハントレスたちを殺していることもいち早く気付くほど、知的な能力が高い。ハントレスたちの能力もかなり正確に把握している。コミュ障だから性格までは考慮できないけど……。
それがむつ自身の能力なのか、身体能力の強化がイマイチで、その分知能が強化されてしまったのかわからないけれども、脳細胞が残存していれば記憶が保存できる特殊な脳の作りを見ると、後者なのかなあと思う。
そんなむつの願いは「(ハントレスの)みんなと仲良くすること」そして「自分の進言をみんなが聞いてくれること」
これは、1巻の179ページで、むつ自身が語っている。
私は…皆ともっと仲良くなりたいんです
正しいことを言っているのに誰も何も変わってくれない環境はもう…いや
そしてこの願いは、デルウハが指揮を執ることによって解決することとなった。
デルウハによるハントレス殺戮記憶操作が功を奏し、ハントレス全体のコミュニケーションは改善され、むつもハントレスたちに馴染むことができるようになったのだから。
実際、3巻第8話、デルウハの凶行がバレて、ハントレスたちが反旗を翻すシーンで、みんながむつの進言を聞いている。そのうえ、むつの作戦通りの行動をとっており、完全に指揮官ポジションとなっていた。
前回、よみの考察で、よみの願いはデルウハが来たことによりもう叶っていると説明したと思うが、むつの願いも既に叶っているのである。
ところが、やったね、めでたしめでたし、というわけにはいかない。
何故かというと、先にも述べた通り、死ねないからこそ、むつは死ぬほどの痛みがメッチャ怖いからである。
むつは デルウハに対し怒りは感じていない
ただ恐れているだけなのだ 死ぬほどの暴力を振るわれることを
彼への感情は野生動物に対するそれである 気まぐれに自分や仲間を殺す熊…
「罠にかけて弱らせ いずれは駆除をしなければ」
5巻冒頭のシーンである。
デルウハが来たことによって、むつは、イペリットから殺される痛みと、デルウハから殺される痛みの両方を恐れなくてはならなくなった。いくらみんなと仲良くなれたと言え、気まぐれに殺されてはたまったものではない、ということだ。
しかしハントレス全員で立ち向かっても、デルウハには勝てない。そのため、むつはデルウハの身体を欠損させ、戦力を削いで駆除しようと、二本足のイペリットの元へ向かわせる……
そうして迎えた6巻。
デルウハは意外な解決策を用意してむつを驚かせることになる。
それは脳細胞だけ殺しきる薬。脳細胞が死ねば、むつは記憶を失えるようになる。もう痛みを記憶し続けることはない。
これからは死ぬほどの苦痛を覚えていなくていい
「何を覚えていて何を忘れているはずか」に気を付けてビクビクしながら話す必要もない
思うまま 好きに振るまえ!
そう来たか~~~!!と声に出してしまった読者も多いのではないだろうか。私も思わず声が出ました。
むつは、このデルウハの言葉に今までの苦労を思い返し、涙を流して仲直りを受け入れる……。
みんなと仲良くなったうえ、痛みの記憶という部分でも解決を得た。もはやイペリットにもデルウハにも怯える必要がない。
いやー、これは完全に落ちましたね!知能が高いとはいえ、むつの情緒は子ども。デルウハの本性を知りつつも、やさしくされてコロッといってしまったか……。
むつ本来の能力を発揮できるし、もうデルウハに首ったけのズブズブだ!
と思うじゃん?
素直に読むとこの流れは正しいように思えるんだが、今回これで終わりにするつもりは毛頭ない。
タイトルを見てほしい。むつは子どもデルウハだと思ってその行動を追うと、見え方がどうも不穏に変わってくるのだ。
むつがデルウハに似ているという話から始めよう。
これは、1巻の第2話にて明示されている。しかも、よみとデルウハの二人からそう思われているのだ。
デルウハの特徴とは何だろう。ずば抜けた頭脳と合理的な思考、倫理観の欠如、情のなさ、そしてパンとサラミへの執着。
数個挙げただけなのに、一瞬で最悪な奴とわかる。ちょうかっこいい(個人の感想です)
さて、むつはどうだろうか。
むつの倫理観と感情は、やはりどこか壊れていると言わざるを得ない。
1巻でよみを助けに行った際も、どこか他人事のようにブツブツと、「私だと効率が悪いから一回帰る」「よみちゃんなら6分は持つと思う」。仲良くなることを心底望んでいるはずのハントレスの皆が目の前でデルウハに殺されても、微笑みながら「倫理的な部分を考えなければ効率がいいと思う…」である。
今読み返したら、このシーンのデルウハめっちゃドン引きしてて笑った。デルウハにこんな顔させるのはむつくらいだろう。
むつはさらに、皆と仲良くするということに強く執着を持っている。そんなだから、デルウハに共犯になれと言われて(結局デルウハの嘘だったけれども)ニコニコと快諾するのだ。
自分が皆と仲良くなれるのであれば、彼女らがいくら殺されてもかまわない。これも、デルウハがパンとサラミを食べられるならなんでもするのと似ている。
ある意味、倫理観も情もなく、めちゃめちゃ自分勝手な奴である。いやーかわいいね(個人の感想です)
というわけで、基本的にむつは最悪最強なデルウハと、あんまり変わらないわけなんです。1巻から明示されているということは、今後も重要な布石になっていくと考えていいと思うんだよね。
子どもデルウハ、と書いたのは、むつがコミュニケーション経験不足で、まだ他者の性格や感情まで計算に入れられないからである。そんなだから、皆も話せばわかってくれる、みたいに思ってしまったりする。
また、銃や大砲の構造など、知らないことも多い。3巻のデルウハ戦では、銃が水に濡れると使用できなくなると勘違いして戦略を間違えている。デルウハから教わらないとわからないこともまだ多いのだ。
子どもはいつか大人になる……かどうかはわからない。6巻以降はデルウハの記憶操作が効くようになるから、他のハントレスのように成長を阻害される可能性は高い。
ただ、大人より子どものほうが、残酷だったりするんですよね……。それを思うと、このことがむつにとって吉と出るか凶と出るか、可能性は無限大である。
少し脱線したので話を戻す。
むつを子どもデルウハだと思って、まず4巻184ページからを開いて読んでほしい。イペリット化した吉永が、むつにデルウハについて教えるシーンである。普通に読むと、ここでむつが記憶を保持していることが明かされる。
皆と仲良くなれたから あの恐い人は倒してしまって恐い思いをしないようにしようとしたの でも… 強すぎた
それに思ったの(中略)誰も欠けずに 全員が納得した形で 倒す必要がある
5巻冒頭で語られており、先にも引用したが、むつはデルウハに対して怒りは無い。怒り無く、淡々と、恐い思いをしたくないからデルウハを倒すと話している。
しかも、むつは皆と仲良くすることに執着しているので、「全員が納得した形」で倒すというのである。
それにしてもデルウハのおかげで皆と仲良くなれたようなものなのに、仲良くなれたからもういらない、というのはなんともサイコパスっぽい思考なんだよなあ……。
むつはさらに語る。「万全のあの人に完全に勝つことは不可能」なので……
集めればいいんじゃないかと思ったの
指とか 引き金が引きづらくなるでしょ 目でも 手でも 足でも
デルウハ(あの人)の体を集めていけば いつかいい形で勝てるんじゃないかと思ったの
これがむつがデルウハを倒す方法である。これ、この子、子どもデルウハだと思って読むと、たぶんガチのマジで実行するつもりなんですよ。
ヒェッ。そう思った方は6巻も並べて開いてください。冒頭すぐ、むつがデルウハの右目を潰すシーン。
このシーン、怒りに我を忘れて突撃するも、デルウハを殺す勇気が出ず、目を抉るのみで終わったように見える。
でも、むつの狙いって、そもそも最初からデルウハの目を奪うことだったのでは?
可能なら、足も……(すぐに医者に診てもらわないと足を失うというデルウハの発言から)
この時、デルウハはかなり負傷しており、身体のどこかを奪うには絶好の機会だったはずだ。
しかし、むつはデルウハと直接対決はできるだけしたくない。これはおそらく、デルウハを傷つけたことでの仲違いを防ぐためと、自身の目的に気付かれないようにするためだろう。
そう考えると、この怒りは完全な演技ではないにしろ、ある程度打算を持っていたのでは……?という気がしてしまう。
地雷を踏んだ、ということにすれば、不意を突いて確実にデルウハの欠損を狙える。
デルウハ的には反抗ではなく事故として処理されるだろうし、そのうえ、今後少なくともむつのいるところではハントレスたちを殺し合わせることは避けるだろう。
今回は脳細胞を殺し切る薬で記憶を消されてしまったが、これがなかったとしても、反省して謝罪し、デルウハを基地に連れて帰り、関係修復を図ることは十分可能だ。
だいたい、むつに、こんな壊れた子に地雷なんかあるのか?たぶんデルウハに地雷がないように、むつにもないんじゃないか?という気はする。
むつが目を狙ったことも、ある程度正気を保っている証拠になりはしないだろうか。
だって、4巻にの方に戻ってほしい。むつはこんなことを言っている。
手袋のデコボコを目に入れられるのは本当に痛かったから……
この……の後に続くのは、「最初は目を奪いたい」という言葉なのではないだろうか?
さらに恐いのは、6巻のデルウハが脳細胞を殺し切る薬について説明し、関係修復を図るシーン、むつはデルウハの握手を断ったのである。
だって、別に、握手したっていいじゃん。握手してもしなくても、成り立つ流れなのだ。
しなかったということは、仲直りを受け入れることを断ったと考えるのが妥当だ。むつにはまだ、デルウハを欠損させて、いつか「いい形」で勝つという目論見があるからということではないだろうか。
そして、断ってむつが何をしたのか。それは吉永のことを教え、デルウハを更なる遠征に行かせることである。
これももちろん普通に読むと、デルウハのやさしさに心を打たれ、罪悪感から教えたように見えるが、それを逆手に取って、この状況ならデルウハとの関係を壊さずに遠征までさせられるという打算的な判断があったのでは?とも思える。
デルウハへの説明が絵で表現されて、実際どこまで真実を話しているかわからないのもどうも怪しい。直後にデルウハが「俺と殺り合わせるために‼?」と言っているので、少なくとも欠損云々の話はしていないのでは……。
こうやって考えていくと、むつが記憶を失えるようになって涙を流して喜んだ、といううつくしいシーンは、どういう意味を持つのだろうか。
嬉しかったのはその通りだろうし、痛みへの恐れが減ったのもその通りだろう。しかし、それが、デルウハと仲良くすることとイコールにはなっていない。懐柔されていないのだ。
今までのむつの行動を見る限りでは、デルウハに恩を受けたから恩を返すとか、やさしくしてくれたから信頼するとか、そんな子ではないように思えて仕方がない。
そうなると、デルウハは地雷も分かって関係修復もできて理想的な結果と思っているが、実際は全然別で、むつの罠にハマったうえ、むつの萎縮だけが治った、という結果になっているかもしれない……。
いやあ、不穏になってきた。面白くなってきたぞ。
これは徐々にデルウハが欠損していくフラグ……!?その裏でほくそ笑むカワイイむつが描かれるかも……!?
ぶっちゃけ物語を追うごとに、デルウハがだんだん身体を欠損していったらちょっと私のフェチ的に美味しいというか、性癖をくすぐられるというかなので、ちょっと楽しみにしていたりもしています(趣味が悪い)
長くなったのでここでおしまい!よみと同じく、むつも将来が楽しみなキャラクターですね!
もちろん、この考察は作者のむつ像と180度異なる可能性も高いし、むつはもっと純真でいい子のはず、と解釈している方も大勢いると思う。
あくまで、こうだったら楽しいな、という私の妄想なのであしからず。欠損進むフラグも完全に趣味だし……。
この通りにならなくても(むしろならない可能性の方が高いし)もちろん買い続け、応援し続けます。
でも、こんな風に考えると、記憶操作によって時に足元を掬われているデルウハに対して、もう記憶の齟齬を気にせず思うまま行動できるむつという対比構造で物語を描いていくこともできるはずで、それはそれで面白そう~と思う。
しかしまあ、ちらっと聞く限り、むつは続刊でちょっと大変なことになっているらしい?(Twitterのネタバレを微妙に踏んでしまった)ので、私のこんな考察なんか超えてくる面白いものが出てくるのもメッチャ期待しています。
他の、まだスポットが十分当たっていない女の子たちの動向もとても楽しみ。新しく何か知見を得たら、正しかろうが間違っていようが、ガンガン記事を書いて、にぎやかしの一端になれればと思います。がんばる~