某疫病もそろそろ落ち着いてきて、旅行を解禁したという方も多いと思う。
実際には落ち着いたというには微妙なところだけれども、このへんで落としどころを考えるレベルにはなってきているとは思う。まだまだ対策はしつつ、高齢者や持病持ちの方は引き続き警戒をしてほしいところ。
まあそんなことはともかく。
5月の終わりに夫と長野旅行に行ってきたのだが、美ヶ原ハイキングがあまりにも良く、1か月たった今でも忘れられないので、いっちょレポートでも書いてみようかなと思う。
美ケ原を散歩したいというのは、初めて行ったビーナスラインに魅せられた10年前から思っていた。
ただ、山の天気は変わりやすいというのはマジで、美ケ原付近に行くと雨が降ったり、雷が鳴り始めたりで、ろくに散策できないまま年数だけが経って行った。
特に夏。夏の長野は怖い。天気がすぐに変わる。それが楽しくもあるけれども、私が見たいのは晴れ渡ってアルプスがすべて見渡せるうつくしい風景の美ケ原なのである。
秋も良いが、緑が多いほうがいい。秋空と雲海、紅葉もかなり美しいのだが、ちょっと違う。
冬になると雪が降ってしまって、そもそも普通の装備だとたどり着けない。それはそれで絶景らしいのだが、当方雪国生まれで雪には嫌な思い出しかなく、まだそこは乗り越えられていないので行かない。
さて、そこで今回、新緑を狙った。地上は初夏だが、山の上は涼しく、萌え出した緑で染まっている。ついでに、まだアルプスのほうは雪が残っている。完璧な季節である。空気の澄んだ朝から散策できたら絶対に最高に違いない。
問題は天気である。晴れたら絶対に美しい。しかし、曇ったらたぶん何も見えない。山の上でガスに飲まれて「うっひょ~何も見えねえ!」と、けらけら笑いながら嘆いた経験がある山好きの方はさぞ多かろうと思う。
天気ばかりはギャンブルだ。当日までわからない。しかし悲しいかな、人間のサガ、天気予報を毎日睨みつける生活が続くのだった。
晴れろ~晴れろ~
そんな私の祈りが通じたのかは知らないが、突然天気予報が晴れに変わった。3日目は微妙だが、少なくとも1,2日目は快晴で、気温も爆上がり猛暑ということであった。
やったー
というわけで、私の長野旅行は最高の天気で幕を開けたのである。
そして天気ばかり気にしていた私は、大切なことを忘れていた。特急の指定席を取っていなかった。
東京から長野に向かう特急あずさorかいじは、数年前から自由席がなくなり、座席未指定券というクソ……あ、いや、ちょっと初心者(何の?)に優しくない仕様に変わっており、購入のない指定席に座るか、誰も座っていない座席をジプシーするか(これはあまりやらない方が良いらしい)しかなくなってしまった。
やってしまった。平日ならまだいい。大変だ、今日は土曜日だ。しかも天気がいい。すこぶる良い。
当然、席が空いているはずもなく、私と夫はデッキで地べたリアンをしながら2時間以上の移動を耐えるしかなかったのである。
誰だ自由席やめようって言った奴。これを読んでいるみなさんもお気をつけあそばせ。
乗車中はやり場のない怒りと憎しみを抱えていたが、快晴の松本駅が思ったよりきれいだったので、早々に怒りとかは忘れた。忘れたほうがいい。
レンタカーを借りて、その日は松本~安曇野周辺をドライブし、わさび農園と廃線ウォーキングでもう夏?ってくらいの鮮やかな緑を堪能。夜は松本駅近くで地酒を飲んで早々に就寝。
そして朝6時前に起床し、ホテルの朝食をもぐもぐする。焼きサバとパンが美味かった。どんな組み合わせや。
そして美ケ原高原美術館まで約1時間ほど車を走らせると……。
天国かな??無加工ですが、実物はもっともっと綺麗。
見えている山は多分北アルプス。いわゆる飛騨山脈のあたり。まさに私の見たかったアルプスが見渡せる絶景。思わず見入ってしまう。
ここは、美術館から15分ほど木道を上った先にある、牛伏山の頂上。下から見ると牛が伏せている形に見えるためにそう名付けられた模様。ちなみに木道自体もめっちゃ綺麗。
基本的に道は整備されていて、急な登り等もないので、スニーカーでも問題ない感じ。ただ、所々岩がごつごつしていて歩きづらいところがあるので、登山靴だと快適に歩けそう。我々は一応登山靴で行きました。
さて、着いて早々目的は達成されてしまったのだが、私にはひそかにもう一つ目的があった。
牛である。
美ケ原高原は牧場の役割も担っていて、だいたい5月から10月にかけて、下界から避暑目的で牛が連れて来られる。その数なんと300頭ほどとのこと。
何を隠そうこの私、牛が大好きなのである。
まだ記憶もほとんどない幼少期に、牛の絵でなんかの賞を取っていたりする。いやなんも関係ないけど。
牛はのんびりしていて良い。生まれ変わったら牛になりたい。
ちなみに長野は高ボッチ高原と長門牧場で牛を愛でた。さて美ケ原の牛はどんなもんだろう。遠くに豆粒ほど見えるのが牛かな?
ということで、ここから約30分ほど下っていくと……。
牛だー!!
ブォォーと唸り声を上げて近寄ってきてくれたのは、黒毛和牛でした。ぶっちゃけちょっと怖い。写真だとわからないけど、よだれがスゴイし、走ると速い。全然のんびりしてなかった。食われそうだった。草食だけど。
怖かったので、終始夫に「いつか我々の食卓に並ぶかもしれないから優しくしてやろう」と言い続けてた。謎の食物連鎖頂点のプライド。
ホルスタインは近くに来てくれなかったけど、遠くにちゃんといました。のんびりしてた。カワイイ。
しばらく牛を眺めながらゆっくりしつつ、ここからはまた緩い登り。若干道がガタついているので、登山靴で良かったねと言いつつ登る。牛が遠くなる。また会おう牛。
30分弱くらいのんびり登ると、山頂である王ヶ頭に着く。相変わらず北アルプスが綺麗である。下に見える町は松本市。松本だったら移住していいな……と常々思っている。
王ヶ頭にはホテルと、長野放送の送電塔がある。赤い屋根がホテル。山の上のホテルだが、とてもキレイ。
景観を損ねるという意見もあるみたいだが、個人的にはカッコ良くて好き。
まだ昼には早かったので、ここから20分ほど歩いて王ヶ鼻に向かう。軽いアップダウン。そしてここらへんになってやっと新緑の木が出てくる。ほんのちょっと、森林浴である。
美ケ原は昔から牧場利用のために、人工的に草原ばかりにしているので、木がない。今までの写真もなかったでしょ。人間に征服されたお山なんだなあ……。
さて、王ヶ鼻。めっちゃ綺麗。
ここまで全然体力も使わずに来られたので、なんというか、人類の開発に感謝という感じしかない。
美ケ原は一応日本百名山の一つで、下から登ることもできるらしい。そのうち登ってみたいね。
ここはかなり開けた場所で、北、中央、南アルプス、八ヶ岳が全部見えます。なんと、日本百名山の半分近く、41座が見られるとのこと。昔登った蓼科山も見えて、なんだか感無量。
天気がいいと富士山まで見える。見えた。写真だと写らないかな~と思いつつ、拡大するとうっすら◯したところに見えます。
王ヶ鼻でぼうっとしているとだんだんお腹が減ってきたので、王ヶ頭ホテルへ引き返すことに。
ホテルでは私がアラビアータ、夫がビーフシチューを注文。山の上の食事なので全く期待していなかったが、めちゃめちゃ美味しかった。美味しすぎて写真を撮り忘れた。
ホテル内に売店もあって、お土産品も買える。ただ、トイレは山らしく有料。山の上では水は貴重品なのだ。
ちなみにこの王ヶ頭ホテル、人気で全然予約が取れない。今回の旅行も宿泊を考えたが、1ヵ月前では取れなかった。まあ、旅行し始める人が多いし、当然と言えば当然。
ここに泊まってご来光を見るのも楽しそう。冬はスノーシュー体験などもあるようで、いつか泊まってみたい。
そんなことを考えながらソフトクリームぺろぺろ。これまたちゃんとした牧場のソフトクリームでメッチャ美味い。写真はあるけど夫ががっつり映ってるので載せられない。
そんなわけで、美ヶ原散策も終盤である。
帰りはアルプス探訪ルートという、例によって北、中央、南アルプスを見渡しながら歩けるというルートで戻ってみた。
ちょっと危ない。比較的風もある。滑り落ちたら死ぬ。でも、歩道はかなりしっかりしているので、気を付けて歩いていたら落ちないので大丈夫。
昼過ぎになると人も増えてきて、すれ違う時だけ少し怖い。犬を連れた人も多かった。どの犬もはしゃいでいてカワイイ。
この景色の中を歩いているだけでたまらん。加えて、絶壁の崖になっているところや、岩場もあって飽きない。
崖は先端まで行けるようになっていて、ちょっと覗いたらメッチャ怖かった。注意喚起の看板もあるくらいだから、ほんとに危険なんだと思う。
そんな感じで1時間ほどのんびり散策すると、牛がいたところまで戻れる。
牛の数がちょっと増えていた。牛もやっぱり朝は寝ているということなのか、それとも下界から新たな牛が連れてこられたのか。
牛も多いが人も多い。牛がいるところまでは車で入れるので、おしゃれ着でデート中のひとも多かった。牛を見てのんびり散歩して帰るのもまた良い。
しかし我々は美術館に車を置いているので、微妙に登りが待っている。
登山ほどの疲れはないものの、そこそこ歩き疲れている。私は比較的元気だったが、暑さもあり、夫がばてていた。
夫は昔宮城の滝で熱中症になったことがあるので、水分を取らせながらゆっくり歩く。こういうのを見ると看護師で日夜問わず走り回っている自分は割とつよい。
と思ったけど、強すぎる日差しでアレルギーを起こし、気がついたら手の甲が湿疹だらけだった。よわい。
30分ほど登って、牛伏山に舞い戻り、絶景と牛に別れを告げる。後は下りの木道なのでとんとんと下り、これにて美ヶ原高原ハイキングは終了。
散策を始めたのが8時過ぎ、駐車場に帰ってきたのが14時くらい、ということで、計6時間くらいの散策になった。とはいっても、牛や景色を眺めたり、ご飯を食べていたりするので、実際に歩いていたのは4時間ちょっとだったと思う。
いやー天気が良かったのもあり、とにかくうつくしすぎて圧倒されるばかりだった。
残雪が眩いアルプスの山々、広大な草原でのどかに草を食む牛たち、林立する送電塔の異様な白光り、眼下に広がる新緑の山々と静かな街並み。どれを取っても、下界では絶対に見られない光景で、最高が積み重なって脳がバグりそう。
ここの景色を覚えちゃったら、自宅近くの山の景色とかが霞んでしまいそう。しばらくは絶対比べてしまうな……。目が肥えてしまった。
この日はビーナスラインを下り、蓼科のお気に入り旅館「たてしな薫風」に泊まる。歩き疲れた体に温泉がとても気持ち良かったし、いつもより多くご飯が食べられた(それでも少し夫に食べてもらったけど……)
ここももう10年近く通っているけれども、サービスや食事など色々移り変わりがあって楽しい。一度料理長が事故って夕食がなくなった事件があって大変だったけど、全額無料になってそれはそれで神サービスだったな~。
3日目は、ゆっくり宿を出て、旧中山道付近をドライブして、お気に入りの五一わいんを購入してから帰路に就く。ここはここでたいへん綺麗だったのだが、前述したとおり目に美ヶ原の風景が憑りついているので、美ヶ原の話ばかりしていた気がする。
まだ今年は半分しか経っていないけれども、間違いなく今年行って良かったところNo.1である。
ちなみにNo.1が更新されたらまたブログにレポート載せる予定。
拮抗する可能性があるのは、8月に予定している燧ケ岳登山かな~。行ったことのあるフォロワーさんが素晴らしい景色と絶賛していたので、今からとても楽しみです。