かみむらさんの独り言

面白いことを探して生きる三十路越え不良看護師。主に読書感想や批評を書いています。たまに映画やゲームも扱っています。SFが好き。

だからにこはデルウハに選ばれない(Thisコミュニケーション ネタバレ考察)

祝!Thisコミュニケーション7巻発売!いや~今回も面白かったですね!

もう発売から1か月経ってしまったけれども……。

今回の面白ポイントは、やっぱりデルウハの目が治っていたことが発覚したところ。

私ちょっと前にむつ考察で、むつはまだ諦めていないのでは?と書いたわけだけど、いやもう臓器のストックがあるとか、むつの希望完全に絶たれたやん……という感じ。強く生きてくれむつ……。

そして私の欠損好きという性癖が満たされることもなくなってしまった。いや、五体満足に越したことはないはず。欠損することで弱点が増えるし、作戦の幅も狭まってしまうしね。

しかし、首もくっついたし、研究所すげー!何でもありだな……。1巻のころから思ってたけど、所長がいちばんヤバい奴なのでは?

そしてむつが意外とまともだった。いや、でも、むつは倫理観がバグっているだけで、痛いのも怖いのも嫌な子だから、ループに耐えられないのは割と仕方ないとしか……。

「あなたはもういい」は割とサイコパスっぽい発言だし、ぼくはまだむつ諦めてない説は推しますよ(物理的に不可能になったけど……)

しかし、デルウハ、オスカーの時も思い違いをしていたなあと思い出す(4巻の終盤あたり/オスカーを殺さなかった理由について)

戦闘力や弱点についての正確さはずば抜けているけれども、気持ちや心の部分での計算は時々狂う様子。まあ、ハントレスに関しても、殺してやり直す以外の解決策が乏しい男だからなあ。

オスカーの時はいい感じに惚れてもらえて良かったけれども、今回は最悪な結果につながってしまったわけだし、いつか絶妙な計算違いで足元を掬われる日が来るのが楽しみなところ。苦しむデルウハが見たーい!

で、最後はデルウハの脳のスペアから作り出された、デルウハクローンとの対決!面白くなってきました!というところでおしまい。

引きが最高過ぎるだろ!次巻の発売が待ち遠しすぎる!

本誌見ればいいじゃん、という感もあるのだけど、この待ち遠しい時間が楽しい、何も知らないまま1巻分を楽しめるという、コミックス派の利点も捨てきれないのだな…。

でもツイッターで「人間が一つのことを習得するには1万時間かかると言われている。」のいちこがバズっていたり、今月もデルウハ殿は最悪だった、最悪を常に更新している男、とか言われていたりすると、つい心がぐらついてしまうね。

 

さて7巻でいちばんスポットが当たったハントレスは、にこちゃんだったかと思う。

ハントレスの中では次女に当たり、明るい性格だが、他者を挑発するような発言が多いとプロフィールに書かれている。

多い、というか、彼女の言動はほぼ他者を挑発するものである。いわゆるウザいタイプ。うーん、ウザカワイイ。

今回は、そんなにこについてちょっと考察してみた。

まあ、と言っても、考察するまでもなく、にこちゃんとても分かりやすい性格をしているんだけど……。

まず、にこの起爆スイッチは「嘘」である。

7巻冒頭で、世界を救うなんて言っていないとしらばっくれるデルウハに対し、にこは「最ッ低」と体が吹っ飛ぶほどのビンタをかましている。

その後に現れた吉永にもキレてしまって、我を忘れたように殴りかかっている。

どいつもこいつもだよ!!!

嘘つき! 嘘つき‼ 嘘つきばっか‼

にこは嘘を吐かれると、異常なほどに狼狽し、パニックに陥ってしまうのだ。

これは7巻冒頭だけではなく、5巻、7人目のハントレスの殺害が発覚した時も同様だった。

何が「俺じゃない」「死体は見てない」よ‼

この…嘘つき‼ 結局他の奴らと何も変わらないじゃない‼

喋らないで 触んないで‼

その後、よみと揉み合ってデルウハを崖から突き落としてしまい、

あんな…あんな嘘つき!人殺し‼ 死んでいればいい!

助けになんて行ったら殺されるのよ! あの子みたいに‼

人殺しの前に、まず嘘吐きが来るあたり、にこの怒りは、明らかに人殺しよりも嘘つきに向けられている。

さらに、この場面の「あの子みたいに」というセリフは、数ページ後に再び使われている。

デルウハが私達を殺しに来てるんだわ‼

一人ずつ殺されて捨てられるのよ! あの子みたいに‼ あの子みたいに―――

「あの子」というのは、おはなしの流れから考えると、7のことのように取れる。

しかし、35年以上前に瓶詰され、3日前に成長・失踪した7に、にこと交流があるわけがない。それに、前述したように、にこは7の殺害よりも嘘を吐いたことに対して怒っている。ここでにこが7に拘るのは不自然だ。

にこが現状パニックで正常な判断はできていないと考えると、「あの子」とは別の誰かを差すと考えた方が自然なように感じた。

ここから予想するに、この「あの子」とは、過去に、にこと関係が深かった何者かを指すのではないか。

にこは、「他の奴ら」と変わらない、とも語っている。にこは研究所生まれであるため、「他の奴ら」はまず確実に、研究所の研究員を指すだろう。

そういえば、4巻冒頭、よみが電力塔を壊した際も、

あんな大事な物壊したよみをみーんな遠くから見てるだけ

なえたっつーかぁ 皆死ねば?って感じ

と、周りの研究員たちに対して、かなり辛辣だった。

「助けに行ったら殺される」「一人ずつ殺されて捨てられる」という言葉も関係あると推測すると、にこと関係の深かった「あの子」は、ハントレスになれなかった少女と考えるのが妥当だろう。

まとめると、にこは、供出された少女の一人と深い関りがあったが、研究員に何らかの嘘を吐かれたまま、助けにも行けず、その子は殺されてしまった。というストーリーが浮かんでくる。

このような背景があったと考えると、にこの不必要な他者煽りや、嘘に対するパニック、常にイライラに苛まれ、ストレスに弱い性格も納得がいく。

しかしにこは他者を強烈に必要としている。2巻で、家族だけが人間関係ではない、と言ってくれたデルウハに縋りついたことや、今回7巻での「次はちゃんと私に向き合ってよ…」というセリフに、それはありありと現れている。

にこは常に、嘘を吐かない誰か、依存できる誰かを常に求め続けているのだが、トラウマにより、他者を傷つけるような発言しかできないのだ。

 

さて、こんな風に語ってくると、あるキャラクターが被ってくる。

よみちゃんである。

よみもまた、強烈に他者から必要とされたい、認められたい、と感じているにも関わらず、他者に受け入れられなかったトラウマから、乱暴な発言ばかりしている。弱点は心が弱いこと。

よみはにこと似ている。よみはたびたび、にこに対して自分の強さを誇示するし、にこも、よみより強いと嘯く。5巻でも二人は大げんかをしている。

しかし、デルウハはよみを選んだ。

ここらへんは去年の12月のよみ考察で書いているので参考にしていただきたい。まあ、よみ一人だけを伴侶として選んだわけではなく、自身の生存のために最も必要な駒の一つとして、だけれども。

それでも、よみがデルウハに依存することをデルウハは許している。7巻でもよみの進化動向について常に気を配っている。よみを殺せなくなる未来を、デルウハは常に憂いているのだ。

対して、にこはどうだろうか。

まず2巻、縋りついてきたにこを、デルウハは容赦なく打ち抜いた。

俺は別にお前とそういう関係になりたいわけじゃない

俺に入れ込んで付きまとわれちゃあ困るんだよ

距離は適切に取ってもらわねぇとな

いやあ最悪な言いようである。にこの不安定さに気付き、精神的なケアが必要だと言っているにも関わらず、決して依存されたくないという強い気持ちを感じる。

にこに対する興味関心度も、よみのそれに比べるとあまりに薄い。よみに対しては、依存させるために言うべき言葉を探し、実践しているのに対して、にこが嘘に強く反応することを7巻時点になるまで気が付いていない。

7巻で仲直りするタイミングでも、イマイチ気が付いているのか、そうでないのか曖昧なままだ。にこに対して考察をするような独白もない。

そもそも、にこに対する興味があれば、デルウハなら5巻のにこのパニックで気付いてもおかしくない。

明らかに、デルウハはにこに対する関心が薄い、あるいは、優先度が低い。

なぜか。

それはそのまま、デルウハの望みと関連している。デルウハがにこへの関心が薄いのであれば、それは、デルウハ自身の生存に対する貢献度が低いということである。

デルウハはそう判断している、ということだけれども。

ハントレスたちは、ある程度武力派と頭脳派で分かれている。みちはまだ能力の詳細が詳しくは描かれないが、現在わかっているところでは、武力派はよみ、にこ、いつか、頭脳派はいちこ、むつと言って差し支えないだろう。

その武力派の三人のうち、明らかに最強の描かれるのがよみ、最弱に描かれるのがにこなのである。

よみやいつかに比べ、にこは戦闘中で唯一性のある技を披露するシーンはなく、頭脳で活躍するシーンもない。5巻で覚醒したらしきシーンはあるが、ドロドロで制御ができていない様のみ描かれていた。

にこもいつかも(ついでにみちも)、よみが覚醒したら束になっても敵わない。

よみを依存させておけば、失敗したときに他のハントレスを皆殺しにできるが、にこはそうできない。にこは当然、人間よりも強い。感受性も強く、他者の心の動きの機微に敏感である。7巻の雪山編を見ても、頭は決して悪くない。だが、それだけ。

にこの能力は、中途半端なのである。

そのうえ、分かりづらい地雷を多数抱え、ストレスに弱く、たびたび感情的になって場の空気を乱す。こと心の問題には疎いデルウハにとって、扱いづらいことこの上ない。

どんなにコントロールしようとしても地雷一つで計算が狂ううえに、うまく扱ったからといって、大して役に立たない。おそらく、デルウハにとってにこという存在は、こんなところだろう。

よみは一人だけデルウハに選ばれているわけではない。けれども、にこはデルウハに選ばれてすらいない。

だから、にこの望みは今のところ、叶う見込みがない。

 

ただまあそれは今のところの話で、これから外部勢力が絡んだり、まだ不明な「あの子」が登場したりすれば、にこちゃんの立ち位置も変わってくるのではないかと思う。

デルウハに振り向いてもらえない不憫カワイイルートに行っても個人的にはいい。それはそれで、そういうキャラも物語には必要なものなので。

でも、外部勢力に騙されて闇落ち覚醒とかしたら、いちばん映えるキャラでもあるんだよなあ~。

いやあ、デルウハの世界救う発言その他もろもろが、マジの嘘だと知ったら、にこちゃんはどうなってしまうんでしょうね、という。

これからどう転んでも面白いキャラだと思うので、今後の展開がとても楽しみですね。トラウマの背景が私の妄想なのかそうでないのか、期待しながら待っていようと思います。絶対そのうちまた来るでしょ、にこ回!

しかしこうやって書いてみると、デルウハがいかに最悪かよくわかるよね。私がデルウハだったらまず真っ先に、にこちゃんみたいな子から攻略するんだけどなあ……。

まあ、速攻刺されるオチかもしれないけどさ。

さて、次巻でいちこにスポットが当たるということで、次巻が発売されたらいちこ考察あたりをやろうかなと思ってます。ああ待ち遠しい……。完結まで頑張って生き延びないとな……。

みちのことがまだよくわからないから、早くデルウハのかわいい大作戦やってくんないかな……楽しみだな……。