鉄道開業150年記念というお祭りで、22000円で新幹線とJRが乗り放題だという。そして何故か希望もしていなければ予定もない平日の3連休の出現。
ひとり旅に出るか。
というわけで、三十路女一人で北東北に行ってきた。
ほんとうは宿も取らず、時間も考えず、適当に現地に行って考えようかと思っていたんだけれども、めったにないお祭り騒ぎと全国旅行支援も相まって地方の宿は満員御礼、主要駅の周辺も徐々に埋まっていく。
新幹線も始発から数時間は混み混み状態。3日前にてキャンセル待ち状態。私はなんとか滑り込み予約ができたけど、当日は立ち席の客もそこそこいる状態だった。こういうお祭りチケットの時は、最低でも1週間前には予約を、できれば1ヵ月前には予定を組んでおかないといけないな~という教訓を得た。
平日なのに暇な人間というのは、案外たくさんいるらしいのだ(お前が言うな)
というわけで、結局いつも通りガチガチに予定を組んで行ってくることに。また、乗り鉄メインは混雑したときに大幅に予定が狂う可能性があるため、もったいないな~と思いつつも避けた。
これが結果的に大正解。行きの新幹線以外はほぼ混雑に当たらず、のんびりと観光できた。
三陸鉄道や只見線など、有名な列車は平日でもだいぶ混みあっていたらしい。只見線なんて開通してすぐだったからね。私も乗りたいけど、そのうちね。
というわけで、今回私が旅してきたのは弘前→十和田→宮古。宿泊は八戸駅と盛岡駅の近く。
せっかくなので、旅行記なるものを書いてみることにした。最近iPhone14にしたので画質もそこそこいいはずだし。
1日目は上野駅を6時38分発のはやぶさに乗り、新青森駅までビューン。はやぶさ、まじ、はやい。新青森まで3時間ちょっとだよ。人類の英知過ぎる。
新青森からはJR奥羽本線で弘前駅まで、40分くらいだった。11時前くらいに到着。
この日の予定は、弘前レンガ倉庫美術館、太宰治まなびの家、弘南鉄道のピンク電車(AOMORI MAPPINK MEMORYという作品)。天気が悪かったので、文化的な一日なのです。
まず、レンガ倉庫へ。綺麗な建物です。
さてともあれ、とにかくお腹が減ったので、隣接する建物で、ゴハン。
ちなみになぜお腹が減っていたのかと言うと、新幹線でまったり駅弁を食べようと思ったら、改札内の駅弁屋がやっておらず、仕方なく立ち食いラーメンスタンド(味がイマイチなうえ、高い)でラーメンを食べたという失態を犯したからです。
後から調べたら、改札外の駅弁屋は開いていたという。下調べは大事ですね。
まあそんな失敗はともかく、今日のランチはワンプレートランチとシードル。鉄道旅なので昼から酒も飲める。まあ、車を運転することはないけど……。
ここは日替わりシードルを出しており、この日はもりやま園のテキカカシードルという、クラフトシードルだった。すっきりしていておいしい。プレートも酒に合うものばかりでよかった。
しかしクラフトシードルなんてもの、初めて知りました。いろんな酒があるのね。
レンガ倉庫では「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」展という、美術館になる前のレンガ倉庫で、弘前出身の有名画家である奈良美智の展示会を行った際のドキュメンタリー展がやっていた。
展示のメインは、昔の展覧会のポスターやグッズ、来館者の写真など。そして、関わった地域の人たちのインタビュー映像。インタビューはメイン展示で、たくさんあって映像も長い。全部見切れなかった。
いやあ、地域の人たちの力がすごい強いな、という印象。あまり美術関わりない人たちが、なんか面白そう!ということで集まって、懸命に作り上げたのだそう。
奈良美智が最後の作品を創り上げて出てきたところを、天岩戸に例え、盛大に祝った話とかを聞きながら、もう神様じゃないか、と笑ってしまった。
私はこういう地域のつながりみたいなのが嫌で田舎を出てきたところがあるので、感心すると同時にちょっと引いてしまう部分もある。なんだけど、どうしても惹かれて、インタビューを長時間見入ってしまった。
根本的には、こういう人と人が協力して何かを創り上げる、ということが羨ましいんだよな~……。
私は人と何かを創り上げるとかに全く向いていない人間で、とにかくその手の成功体験に乏しい。文化祭?サークル?人と喧嘩した記憶しかないよ。
そんなわけで、ちょっと涙目になりながら倉庫内を辿る。一人なので誰も慰めてくれない。
それはともあれ、展覧会についての展覧会はあまり見たことがなかったので、なかなか新鮮で面白かった。常設している奈良美智の犬も可愛いし、建物自体が一つの大きなアート作品なので、機会があったらまた来てみたい。
これは乗って遊べる犬。
レストランの犬。カワイイ。
次は、少し歩いて太宰治まなびの家。
良さげな民家です。
ここは何かというと、太宰治が弘前大学に通っていた際に、下宿していたおうち。嬉しいことに無料で見学できる。ちょっと市街地から離れていて、人もぜんぜんいなかった。私は1時間くらいのんびりしていたが、客は間違えて迷い込んだおじさん一人だけ。レンガ倉庫はそこそこ人がいたので、非常に快適だった。
ちょっとギシギシするけれども、太宰が住んでいた部屋がしっかりと残っている。
太宰は下宿先の息子と仲良くしていたらしく、その息子の太宰について記した日記や、太宰からもらった手紙(だいたいさびしいよーと嘆いている)なども保管されている。
太宰が高校時代に執筆した小説も読める(まあ全集に乗っているやつだけれども)し、制服のレプリカもある。物理の公式を記した落書きまで見られる。
偉人にプライバシーはない。
館内では穏やかな物腰の女性が出迎えてくれ、色々と説明をしてくれる。
「この部屋が太宰がはじめて自殺をした場所なんですよ」
とか言われて思わず吹いてしまった。そんな、はじめてのおつかいみたいに言わないでくれよ。
これがはじめて自殺した場所兼太宰のお気に入りの場所。小さいながら素敵な一間です。
はじめての自殺は、異世界失格という、太宰が異世界転生する漫画でも良くネタにされている、カルモチン睡眠薬の大量服薬だそうな。かの芥川もこれで自殺している。ので、芥川大ファンの太宰としては芥川のように死にたいという思いもあったのかなあ。
友達には数学のテストを受けたくないから自殺を図ったんだろうとか言われているらしいけれども。
余談だけれども、異世界失格、なかなか太宰ファンとしては面白い漫画なので、オススメです。
ここには、様々な場所で行われている太宰展のパンフレットとかも展示されていて、そちらものんびりパラパラ捲っていた。
その中で、町田康が太宰について語っている部分があり、おおマチコがどんな風に語っているんだ?と思って読んだところ、こんなことが書いてあった。
人間には唯一性があるのだが、それを認識したら世間に受け入れられない。太宰はその唯一性に拘り、それを文学として描いている。だから太宰を読む人は、そこに自分が書いてあるように思うのだ。
要約すると、こんなようなことである。
いや、わかる~~~!
私、割と太宰治は好きで、結構作品数も読んでいるので、とても腑に落ちた。太宰の面白さを、こんな素晴らしく言語化できるというのは凄いな……。町田康、やはり凄い。
レンガ倉庫で他者や集団とのつながりを持てないことを嘆いた私への大変な慰めにもなった。私もおそらく、唯一性というものに、つい、拘ってしまうのだろう。作家でもないし、なんとも生きづらい。
しかしまあ、なんというか、私は私らしく生きるしかあるまい。私以外にはなれないので。
さて、次は弘南鉄道に乗って黒石駅へ。アート電車の時間を待つ。
弘南鉄道は150周年チケットの範囲外の私鉄なのだけれども、まあ得とか損とか考えてたら旅行は楽しくないし、あんまり考えないことにした。
天気が悪くて岩木山を眺められないのが残念だったけれども、それでも広大な田んぼと果樹園、そしてうっすら遠くに見える山々、なんとも悪くない。
秋真っ盛りだから、果樹園にはリンゴがポコポコなっていて良かった。天気が良かったらリンゴ狩りという手もあったんだけどなあ。弘前城にも行っていたんだけどなあ。まあそれはまた今度ということで。
黒石駅はとりあえず来てみただけだったので、散策する時間はないので、とりあえず駅近くのカフェでアップルパイを食べることにした。アップルパイって、そんなにすごく好きでもないんだけど、有名だしな、ということで。
というわけで、特に期待もせずに頼んだのだけれど……。
これが!とても!うまかった!!
パイ生地がサックサクで、バターがすげー香り良くて、リンゴがジューシーで、なんか別の食べ物みたいだった。おれが今まで食べていたアップルパイはなんだったんだ。多少小ぶりだけれども、満足感がある。普段スイーツ系はさほど食べない私は、一個で大満足。
珈琲はブレンドにしたんだけれども、これまたスッキリした苦みで、アップルパイに合う。たいへん美味しかった。
ちなみにこのアップルパイ、値段見ずに買ってしまったけど、メッチャ安くて300円くらいであった。他のケーキも300円前後くらい。焼き菓子が200円前後。安ーい!
お土産にバウムクーヘンとアーモンドチュイールを買って帰ったけれども、こちらも美味しかった。
BOCOLABO(https://twitter.com/bocolabo1)さんというお店。アップルパイ以外のケーキや焼き菓子も充実しているので、黒石に来ることがあればぜひ。
近くにあれば絶対通うのにな~!また行きたいよ~!
さて、すぐに時間が経ってしまったので、今日最後の目玉、AOMORI MAPPINK MEMORYを見に行く。車体からすでにピンクの片鱗が見えてワクワク。
しかし……ン??
人多くね???
よく見たら、サラリーマンと学生さん。帰りの時間だった。通勤・通学の時間に見事当たってしまったのだった。
オウ、そんなの考えてなかったよ!写真、撮れへんやん!ヒエーやっちまった!
ということで、真っピンク電車の中はほぼ満員。みんな、めっちゃピンクだけど大丈夫??と思ったけど、ぜんぜん動じていない様子。もう慣れてしまったのか。それはそれで強いな……。
しかし、なんか、不思議な時間だった。どこからどう見ても異空間、ビックリ現代アートなのに、もはや日常として消費されている。これはこれで、アートの一つの形としてありじゃん?という。
そういえば、去年行ったいちはらアートミックスも、展示のいくつかが駅に常設されていたり、なんならトイレだったりしたなあと思い出した。
かつては貴族の遊びだったアート鑑賞、段々と一般人も楽しめるようになり、ついには日常に溶け込んでいくのだなあ……。
弘前駅で人が降りてから、やっと少し写真が撮れた。非常に面白いアート空間である。でも、学生とサラリーマンがたくさん乗っていた瞬間がいちばん面白かったなあと、帰ってきてから、思う。
ちなみにこのアート電車、11月13日までやっております。期間はあとわずかですが、駅やレンガ倉庫でやっている地域住民のインタビュー映像も結構面白いので、合わせてどうぞ。
さて、1日目の詰め詰めの予定ももう終わりです。次の日十和田に行く関係で、またもや新青森からはやぶさに乗り、八戸駅へ。
新幹線、はやい!快適!たのしい!普通の旅なら躊躇してしまうけど、今回はチケット1枚で乗れて素晴らしい。
とはいっても、さすがに暗くなってから八戸駅に着きました。駅近くのビジネスホテルにチェックインして、さあ……。
酒盛りじゃ!
とくに何も考えず入った居酒屋で、利き酒セットを頼んだら、秋田と福島と福井の辛口セットが届いた。これが美味いのなんの。辛口好きにはたまらないセット。マジで水みたいに飲める。実質水。
そしてウニ!カキ!サバ!と各種おつまみ!
ウニがもう最高。全く臭くなくてとろんとろんで甘い。カキのオイル付けもぷりぷりで、小さいのに食べ応えがある。〆サバも肉厚で、嫌なサバ臭が一切なくてうまみだけ。美味すぎて脳が溶けるかと思った。最高過ぎてちょっと泣いた。
そういえば地酒頼んでねーやと思って、青森の酒も頼む。ちゃんと八戸のお酒。辛めですっきりして、これまた美味ーい!
まあ値段は張りましたが、大満足で帰宅。
ちなみに、こんな最高なお店は、日本酒居酒屋 松膳さん。
八戸駅から徒歩数分なので、何かで八戸に寄った方は、ぜひ一杯どうぞ。
それにしても、1日目にして既に最高を極めていて、メッチャ楽しかった!
天気が悪くても、一人でも、楽しめるところはたくさんあるなあ~と思った一日でした。
そういえばこの日は、酔っぱらっていたせいか、旅の興奮が過ぎたせいか、あまり眠れなかったけれども、まあ、そういうこともあるよね。
二日目は八戸駅から十和田市に向かい、現代美術館と奥入瀬渓流という、またキツキツの日程で遊びました。
こちらもとても楽しかったので、後日また旅行記を書こうと思います。