かみむらさんの独り言

面白いことを探して生きる三十路越え不良看護師。主に読書感想や批評を書いています。たまに映画やゲームも扱っています。SFが好き。

みんなでやれば怖くない「リーガルダンジョン」(ネタバレなし紹介記事)

まあ、何も言わずにこれを見てくれ。

 


www.youtube.com

 

たびたびツイッターで取り上げていたんだけど、これめっちゃかっこよくない?

同意してくれた方はこんな記事なんか読んでないで、今すぐSteamかSwitchで本ゲームを買ってください。そしてプレイして罪悪感と虚無感に苛まれてくれ。相当尾を引くぞ。

 

というわけで、今日はリーガルダンジョンがめちゃめちゃ面白かった話をしようと思う。ウマ娘で忘れかけていたけども、身近でプレイしたよって声が聞こえないので、みんなプレイしてくれよという思いを込めて書きます。

「リーガルダンジョン」は、Steamにて2019年5月に配信された韓国のインディーズゲーム。好評を博した結果、今年の2月にSwitchでも配信されることとなった。SOMIさんという方が制作しており、「罪悪感三部作」の二部に当たる。それぞれのゲームは独立しているため、どれからやっても楽しめる。私は一部のREPLICAと本作をプレイしており、三部の「THE WAKE」は今後プレイ予定です。

トレーラーを見てもらったらわかると思うけれども、RPG風のシステムこそあるものの、本筋は推理ゲームである。主人公である新米警察官「清崎蒼」の目を通して様々な事件の書類を読み解き、罪状を暴くことで物語が動いていく。

と聞くと、逆転裁判のように真相を暴いて正義を示すようなイメージを持つ方が多いかと思う。しかし、このゲームはそうではない。真相なんてどうでも良いのだ。

このゲームの目的は、様々な事件を紐解き、「点数」を稼ぐにはどうしたら良いかを推理することだ。他者の人生をこねくり回して引っ掻き回し、所属の警察署が評価されるための「点数」に変える。

「善行の美談は0.5点。窃盗は2点。殺人は15点。」

たびたびゲーム中で突きつけられるフレーズだ。プレイすればするほど、この言葉は重く、苦しく、のしかかってくる。

頭の良い方はお気づきかもしれない。正義か悪かというゲームではない。このゲームは、「ゲス」警官の「クサレ」お仕事ゲームなのである。

このゲームでは、フリーペーパーを持ち去ったホームレスの老人を「窃盗」として訴え、2点を稼ぐ。さらに窃盗団のリーダーに仕立て上げれば、5点になる。さて近くに孫がいたようだが、どうしたものか?

点数が稼げなければゲームオーバー、あるいは特殊なバッドエンドへ直行するようになっている。それをハッピーエンドと呼ぶのは自由だが、物語は終わってしまい、先には進めない。

先を見るには、プレイヤー、そして「清崎蒼」は点数を稼ぐ覚悟をしなければならないのだ。

さて、ここまでで、このゲームがどうやって「罪悪感」を感じさせようとするかはわかったと思う。私は、このあたりですでに不愉快になっている方にこそ、本作をやっていただきたい。だって、あなたは世界の汚さをきっと知っているから。

 

ただし、このゲームはめちゃめちゃ難易度が高いのでそこが玉に瑕だ。まあ、ボリューム自体はそれほどないゲームなので、躓いて考えている時間が一番充実していて面白いともいえる。それはプレイヤーの考え方によるだろう。

ちなみに私は割と推理ゲームをやるし、推理小説も読む方だと思うが、夫と一緒に睨めっこして相当イライラしながら(私はこの手のゲームで本気でイライラする人です)、やっとの思いでクリアした。しかし私がゲーム慣れし過ぎていて、難所の一か所を何の情報もなく偶然解いてしまったので、ガチで推理してたらもっとかかったと思う。ただ、あれはちゃんと推理したかったと今でも悔やんでいる。

まあ、詰まったら攻略記事を読めばいいと思うだろう。そうじゃないのだよ。

このゲーム、クリアした後もストーリーを推理しないとわからない仕組みになっている。ただ攻略を当てはめてクリアするだけでは意味がわからないのである。苦労したくない人は、攻略記事を読んで、さらに考察記事を読まなければならない。逆に面倒くさくないか?それ。

なので本作は、ゲーム好きというよりは、推理小説好きで読書慣れしている人向けにできている。ターゲットが狭すぎるようなきらいもあるが、その分、ハマる人にとってはめちゃくちゃに面白い。

私はがっつりハマってしまったし、プレイしてからもう1か月以上経つのに未だにふと思い出しては結構落ち込むし、考え込んでしまう。

断っておくが、理不尽な難易度ではなく、ヒントは明確に作中に書いてあり、順序だてて推理していけば、推理パートもストーリーパートもちゃんと謎が解けるようになっている。ルート分岐も明示されているので、実はかなり親切設計なのである。ムズゲーではあるが、クソゲーではないので、あしからず。

いやーほんとうにストーリーが凝ってて最高なんだよ。ハチャメチャにえぐいけど、ほんとうに面白い。ローカライズも秀逸だし(有名なゲーム「グノーシア」の開発者さんがやってくれました)、人物同士の繋がりや実績のタイトルだったり、細かな部分もこだわっていて、アハ体験と罪悪感が終わらないんだ。

 

広く同意してもらえるとは思わないが、個人的に評価している部分の一つに、主人公が女性ということがある。警察、しかも腐った警察のストーリーで女性を主人公に据えるというのは、ちょっと新しかった。しかもこの主人公、若くして課長を務めるエリートで、部下はヒラのおっさんたちなのである。

ただ、私は最初女性が主人公ということで身構えた部分があった。

近年、全世界的にフェミニズム作品が流行している。韓国も例外ではなく、「82年生まれ、キム・ジヨン」をはじめとしたフェミニズム文学は高い評価を得ている。

でも、ぼく、正直苦手なんですよ、フェミニズム作品。

私はマイノリティでなく、普通に女性をやっているので、当然共感もできるし、痛くて辛くなってしまう部分だってある。フェミニズム作品の台頭に意義だって感じている。

ただ、それがストーリーの肝になってしまうと、私はどうしても面白みを感じるのが難しいんです。メッセージを必要以上に強く受け取ってしまって、そこばっかり記憶に残ってしまう。そしてストーリー上の山場や良いシーンをちゃんと受け止められなくなってしまう。

私は、本作もそんなかんじで、フェミニズム的な要素が用意されているのではないかと思ってしまったのだ。

でもそんなことはなかった。主人公は「化粧でも直してきな」や「いいとこのお嬢ちゃんが」など女性を揶揄される部分はあるが、女性であることを馬鹿にされたり、不当に差別されたりすることはない。先に触れた揶揄する部分も、主人公は女性だぞ、とプレイヤーに示す以外の意図はないように思う。

個人的には、フェミニズムの理想の在り方の一つだよなとも思った。「クサレ」警察ではあれど、女性が男性と同じように扱われ、ミスしたら責められるし、点数を稼げば出世できるのである。

話が逸れたので元に戻そう。

私は単にフェミニズム作品の要素がないから評価をしているわけではない。

ネタバレになるので詳細は伏せるが、ただ、主人公が女性である意味は、クリアするとわかるようになっている。女性でなければ成し得ないストーリー、とまではいかないかもしれないが、少なくとも私はその意味に気が付いてちょっとぞっとした。

女性が有能でかっこいいストーリーはやっぱり好きなんだよな。

女性と男性って身体も違うし、生きてきた文化や考え方はやはり少し違うように思う。この違いを無くしたいと私は思わないし、無くなることが男女平等だとも思わない。この違いに優劣をつけずに尊重することが大切なんじゃなかろうか。

男性と同じことができることがかっこいいんじゃない。女性であることを生かしたかっこよさ、潔さが、グッとくるんですよ。まあ、「クサレ」警官なので純粋なかっこよさじゃないんだけども、それでもやっぱり、うーん、カッコいいんだよ~

ちょっと変な話にはなったけど、単純に主人公が有能でカッコいい女だからそういうの好きな人はぜひやってくれという話です。

 

長くなってしまったが、この記事を読んで少しでも琴線に触れるポイントがあれば、ぜひ、すぐに、今からダウンロードして、プレイしてほしい。そしてこの罪悪感と虚無感を共有してほしい。詰まって投げそうになったら相談してくれればなんとかしてやるから。絶対ネタバレ見るんじゃないぞアハ体験が薄れるから。

私ももう一回記憶を無くしてプレイしたいよ~。まだプレイしていない人が羨ましくてならない。そのアドバンテージを生かしてすぐにダウンロードだ!

基本操作がドロップ&ドラッグなので、SwitchよりPCでプレイした方がやりやすいと思いますので、個人的にはSteam版がお勧めです。でも内容は変わらないから、とりあえず持ってるハードでやろう。さあやろう。今すぐやろう。

 

ここまでネタバレなしで書いてたらストレスが溜まったので、次回はネタバレあり感想も書こうと思う。いつになるかわからないけど、良かったらプレイ後に読んでいただけたら嬉しい。